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システム標準化によりベンダーの乗り換えは進むのか

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ギブアンドサポート合同会社の吉田です。

当初のピン留め時期である2025年度末をもうすぐ迎えようとしていることもあり、個人的に思っていることをダラダラ書きます。個人的に思っていることなので間違えなどあるかもしれませんがご容赦ください。

「システム標準化によりベンダーの乗り換えは進むのか」

国の号令のもと進められているシステム標準化とガバメントクラウドへの対応。 総務省の基本方針では、これまでの「維持管理や制度改正時の改修等における自治体の個別対応の負担軽減」や「ベンダーロックインの解消」が意義として掲げられています。

しかし、現場の情シス職員の皆さんは、うすうす気付いているのではないでしょうか。 「これ、本当に5年後の次期システム更新のとき、他社に乗り換えられるの?」と。

今回は、システム標準化とガバメントクラウドの現状を自分なりに整理し、5年後の次期更改がトータルでどうなるのか、私の予想をお話ししたいと思います。

システム標準化の観点

結論から言うと、システム標準化において、パッケージ(ベンダー)を乗り換える金銭的メリットはほぼないのではと思っています。

システムが標準化されれば機能は同じになります。機能が同じであれば、窓口部署の職員さんが嫌がる「画面や操作の変更リスク」を冒してまでベンダーを変更する理由はなくなり、動機は「安くなるか」のみになります。もう一つ動機があるとしたら、情シス部署の職員さんの「このベンダーとはもう縁を切りたい」という心理的な感情ですね。

ベンダーの乗り換えで立ち塞がるのがデータ連携と周辺システムの改修費です。

標準化法では、国が定めた基準に適合することを求めていますが、同時に「対象事務と一体的に処理することが効率的である場合に、最小限度の追加等が可能」という例外規定が存在します。また、デジタル庁の仕様書でも「同一ベンダー内のパッケージ間連携は、当分の間、提供事業者の責任において行ってよい(=独自の連携でよい)」という特例が認められています。

これが現場でどういう現実を生むでしょうか。 多くの小中規模の自治体は、1つのメインベンダーで十数業務の基幹システムを担い、残り数業務を他ベンダーで補うという構成になっているものと推測します。つまり、メインベンダーのパッケージ内では、標準仕様に乗らない「例外的な独自のデータ連携」が相当数入り組んで温存されていると勝手に推測しています。

もし5年後に「基幹システムの一部業務だけ安いベンダーに乗り換えよう」とすれば、この独自に作り込まれた連携の糸を解きほぐし、現行システム側も含めてインターフェース部分の改修を行う必要が生じます。結果として、その改修費が移行費に重くのしかかるのです。

現在、他ベンダーへの移行費の見積りを取って、その高額さに驚いている自治体も多いのではないでしょうか。

この高額な移行費には、大きく分けて2つの要因があります。 1つは、ベンダー側の「標準化移行(シフト)とガバメントクラウド移行(リフト)に対する強いリスクヘッジ(予備費)」が含まれていること。 そしてもう1つが「需要と供給のバランスの崩壊」です。

システム標準化対応というベンダー側も経験が少ない案件であること、既存顧客で手いっぱいであることから、新規顧客に新規参入しようと手を挙げるベンダーはなかなか見つからない状況です。結果として「限られたベンダーに全国の自治体が殺到する」完全な売り手市場となり、自治体側はベンダーに足元を見られがちになっています。

あと1~2年もすれば、パッケージの品質向上や移行(シフト・リフト)ノウハウの蓄積により、技術的なリスクヘッジ分の価格は下がっていくと予想されます。また、システム標準化・ガバメントクラウド対応が完了する自治体が増えていくことにより、この需給バランスが適切になることも予想されます。

しかしながら、「現行ベンダーに留まる費用」と「他ベンダーへ乗り換える費用(データ移行・連携改修費を含む)」を比較した場合、乗り換えに至るほどの金銭的なメリットは結局生まれないと考えられます。

ちなみにシステム標準化におけるコスト削減の効果は一部あると感じています。私も仕事柄基幹システム改修のシステム見積精査をしていますが、「標準準拠したんだから、要件定義とか設計ってそんなに工数かからないよね?」というツッコミができるようになります。実際法改正対応などの改修費用は下がる傾向にあるのではないでしょうか(ただし、SE単価は上がる傾向にある)。しかし、5年トータルで考えたときに、当初の移行費をペイするだけのコスト削減にはつながらないでしょう。

少しだけガバメントクラウドの観点

さらに、ガバクラ環境では高品質な非機能要件を満たすための「運用管理補助者」への委託費用も継続的に発生します。これは運用保守するSEを押さえるための人的コストになるため、1業務であろうが20業務であろうが一定の費用がかかるものです。規模の経済により、同一ベンダーでできるだけ多くの業務で運用管理補助者業務を担うほうがコストダウンできますので、この観点からも新たなベンダに乗り換えるという金銭的なメリットは働きません。政令指定都市や中核市のように単独利用で運用管理補助者を立てる、自分たち職員で面倒が見られるという自治体はこの限りではありません。

5年後のトータル予想:選べるけれど「選ぶメリットがない」世界

システム標準化とガバクラ対応の観点をトータルで考えると、私の予想はこうです。

「5年後の更新では、おそらくシステム標準化によるベンダーの乗り換えは起こらない。むしろベンダーロックインはより強固なものになる。」

「自由に選べるが、選ぶメリットは全くない」という、標準化の理念とは完全に逆行する世界観に着地しつつあります。 携帯電話の「MNP(マイナンバーポータビリティ)」のような、流動性を確保するための強力な乗り換え補助金制度を国がやるかといえば、現在の財政状況や基盤整備への補助の様子を見ても、おそらく難しいのではと想像します。

では、この状況を打破する手はどこにあるのでしょうか。

一つは、ベンダー側が開発工程でAIを大々的に活用し、劇的なコストカットを実現して圧倒的に安価なシステムを提供できるようになることです。民間ではもう当たり前になりつつありますね(F社さんとかのニュースもみました)。気概のあるスタートアップ企業がポッと出で自治体の「実績至上主義」の壁を越えられるかというと、かなり難しいのが現実です。大手ベンダや一部のベンダに淘汰される世界観になるのでは。

あるいは、ワンチャンあるとすれば…。 複数の自治体が集まる共同体等において、ベンダーに依存しない「基幹システムの共同化・完全内製化」に本気で舵を切る広域自治体が現れることかもしれません。

皆さんの自治体では、次期更改に向けてどのような青写真を描いていますか?やっと移行できたと思ったら次の更改が待っています。5年後を見据えたトータルコストと現場のリアルな状況を、今からシビアに見極めていきましょう。

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